近代化の悪いところ
直島から犬島にやってきました。
運賃が高かったなと、半ば後悔しながらやってきましたが、大きな収穫がありました。
今回は、犬島精錬所ルポルタージュです。
まずは犬島精錬所について、簡単にご説明します。設立されたのは1909年、煙害対策や原料輸送の利便性から島に建設されたものの、銅価格の大暴落によってわずか10年で操業が終了してしまったのです。
しかし、煉瓦造りの工場跡や煙突が、日本の産業革命を伝えるものとして大切に保存されています。
なぜこの精錬所が僕の印象に残ったのか。
その答えは、ここに併設された美術館に展示されていた三島由紀夫の文章にあります。
日本の近代化を危惧していた三島由紀夫は、アメリカの奴隷のような日本を痛烈に批判して自殺します。
日本のアイデンティティが失われることに警鐘を鳴らしていたのです。
このまま行つたら「日本」はなくなつてしまうのではないかといふ感を日ましに深くする。日本はなくなつて、その代はりに、無機的な、からつぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜目がない、或る経済的大国が極東の一角に残るのであらう。それでもいいと思つてゐる人たちと、私は口をきく気にもなれなくなつてゐるのである(果し得ていない約束)
競争市場主義が貫かれた現代社会では、「敵に負けないための発展」が強いられています。
競争とは、ゴールの方向に行われるものです。競い合い、お互いに反発しているようにみえて、実は均質化しているともいえます。
経済成長率のニュースが毎年世間を騒がせますが、そもそも何のために社会は発展するのでしょうか。
私たちが目指すゴールとは何なのでしょう。